社会福祉法人会計基準と勘定科目別の会計処理

会計基準制定の背景

平成12年
社会福祉制度改革に合わせて社会福祉事業法が抜本的に改正され、社会福祉法として新たに施行されました。これを受け、会計面においても社会福祉法人の経営の透明性確保や財務基盤強化に資するため、企業会計の考え方を採り入れた「社会福祉法人会計基準」(旧基準)が導入されることとなりました。

平成23年
旧基準が同一法人の中で複数の会計ルールの併存を許容していたため、煩雑な事務処理等の課題が残されていました。そこで、会計ルールを一元化すべく、すべての社会福祉法人に共通して適用する「社会福祉法人会計基準」(新基準)が導入されることとなりました。
(平成24年4月1日より適用。ただし、平成27年3月31日(平成26年度決算)までの間は、旧基準でも可)

平成28年
その後の社会情勢の変化への対応を踏まえ、社会福祉法が大幅に改正されました。社会福祉法人会計基準も、社会福祉法人に求められる公共性、非営利性に鑑み、規律性を持たせた会計基準省令として制定され、現在に至っています。

 

会計基準の構成

社会福祉法人の計算書類及び附属明細書並びに財産目録(以下、計算書類等)は、会計基準に準拠して作成する必要があります。
実務において準拠すべき基準は、「社会福祉法人会計基準」「社会福祉法人会計基準の運用上の取扱い」「社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項」の3つがあります。

これらの構成は下記のとおりです。

  1. 会計基準
    本文
    勘定科目一覧
    計算書類の様式
  2. 運用上の取扱い
    本文
    附属明細書の様式
    財産目録の様式
  3. 運用上の留意事項
    本文
    具体的な科目及び配分方法
    減価償却資産の償却率、改定償却率及び保証率表
    勘定科目説明

 

会計基準の基本原則

  • 「この省令の規定は、社会福祉法人が行う全ての事業に関する会計に適用する。」とあるとおり、社会福祉事業、公益事業、収益事業のすべてを適用範囲としています。
  • 計算書類等を作成するにあたっては、「明瞭性の原則」「正規の簿記の原則」「継続性の原則」「重要性の原則」に準拠する必要があります。
  • 計算書類等の金額は、原則として総額主義をもって表示します。
  • 計算関係等の金額は、一円単位をもって表示するものとされています。

 

主な勘定科目別の会計処理

引当金

引当金とは、将来における費用または損失が見込まれる場合に、当期に帰属する金額を当期の費用または損失として処理し、それに対応する残高を貸借対照表の負債の部または資産の部の控除項目として計上するものをいいます。

  1. 賞与引当金
    職員に対し賞与を支給することとされている場合、当該会計年度の負担に属する金額を当該会計年度の費用に計上し、負債として認識すべき残高を賞与引当金として計上します。
  2. 退職給付引当金
    職員に対し退職金を支給することが定められている場合には、将来支給する退職金のうち、当該会計年度の負担に属すべき金額を当該会計年度の費用に計上し、負債として認識すべき残高を退職給付引当金として計上します。
  3. 役員退職慰労引当金
    役員に対し在任期間中の職務執行の対価として退職慰労金を支給することが定められており、その支給額が規程等により適切に見積もることが可能な場合には、将来支給する退職慰労金のうち、当該会計年度の負担に属すべき金額を当該会計年度の役員退職慰労引当金繰入に計上し、負債として認識すべき残高を役員退職慰労引当金として計上します。
  4. 徴収不能引当金
    原則として、毎会計年度末において徴収することが不可能な債権を個別に判断し、当該債権を徴収不能引当金に計上します。
    また、上記以外の債権(一般債権)については、過去の徴収不能額の発生割合に応じた金額を徴収不能引当金として計上します。

引当金についても重要性の原則が適用され、重要性の乏しいものについては計上しないことができます。

貸借対照表の表示については、原則として、引当金のうち賞与引当金のように通常1年以内に使用される見込みのものは流動負債に計上し、退職給付引当金のように通常1年を超えて使用される見込みのものは固定負債に計上します。
また、徴収不能引当金は、設定の対象となった金銭債権から控除します。

なお、上記以外にも引当金の要件を満たすものがあれば、「○○引当金」などの名称で別途引当金を計上することが必要となる点に注意しましょう。

 

棚卸資産

棚卸資産については、「原則として、資金収支計算書上は購入時等に支出として処理するが、事業活動計算書上は当該棚卸資産を販売等した時に費用として処理する」とされています。つまり、事業活動計算書上は、購入してから販売されるまでの間は、貸借対照表の流動資産の区分に「棚卸資産」として資産計上する必要があります。

ただし、消耗品、貯蔵品等のうち、重要性が乏しいものについては、その買入時又は払出時に費用として処理する方法を採用することができます。

貸借対照表上に計上された棚卸資産については、会計年度の末日における時価がその時の取得原価より低いときは、時価を付さなければならないとされています。取得原価と時価の差額は、事業活動計算書の事業費の区分に「棚卸資産評価損」として計上する必要があります。

 

減価償却

建物や車両などの固定資産は、使用または時の経過によりその価値が年々減少していきます。会計上は、この減少部分を減価償却費として費用計上することによって固定資産の価値の減少を反映させます。その結果、貸借対照表に決算日時点の固定資産の適正な価値が表示されることになります。

減価償却の対象資産は、耐用年数が1年以上、かつ、使用又は時の経過により価値が減ずる有形固定資産及び無形固定資産であり、土地など減価が生じない資産(非償却資産)については、減価償却を行うことができません。

減価償却の方法は、有形固定資産については定額法又は定率法のいずれかの方法、ソフトウエア等の無形固定資産については定額法によります。
なお、償却方法は、拠点区分ごと、資産の種類ごとに選択し、適用することができます。

なお、基本財産(有形固定資産)及びその他の固定資産(有形固定資産及び無形固定資産)は、個々の資産の管理を行うため、固定資産管理台帳を作成することが求められています。

 

受贈、交換によって取得した資産

通常要する価額と比較して著しく低い価額で取得した資産又は贈与された資産の評価は、取得又は贈与の時における当該資産の取得のために通常要する価額をもって行います。

交換により取得した資産の評価は、交換に対して提供した資産の帳簿価額をもって行います。

 

リース取引

リース取引の分類

リース取引は、ファイナンス・リース取引オペレーティング・リース取引に区分して会計処理を考えます。

「ファイナンス・リース取引」とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいいます。
また、「オペレーティング・リース取引」とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。

なお、土地、建物等の不動産のリース取引(契約上、賃貸借となっているものも含む。)についても、ファイナンス・リース取引に該当するか、オペレーティング・リース取引に該当するかを判定します。ただし、土地については、所有権の移転条項又は割安購入選択権の条項がある場合等を除き、オペレーティング・リース取引に該当するものと推定されます。

また、リース契約1件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額又は通常の保守等の役務提供相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理的見積額を除くことができる。) 300 万円以下のリース取引等少額のリース資産や、リース期間が1年以内のリース取引についてはオペレーティング・リース取引の会計処理に準じて資産計上又は注記を省略することができる等の簡便的な取扱いができるものとされています。

ファイナンス・リース取引の会計処理

ファイナンス・リース取引については、原則として、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。

ファイナンス・リース取引におけるリース資産の取得価額及びリース債務の計上額については、原則として、リース料総額から利息相当額を控除します。

利息相当額をリース期間中の各期に配分する方法は、原則として、利息法(各期の支払利息相当額をリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する方法)によるものとされています。

なお、利息相当額の各期への配分について、リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合(未経過リース料の期末残高が、当該期末残高、有形固
定資産及び無形固定資産の期末残高の法人全体の合計額に占める割合が10 %未満である場合 )は、次のいずれかの方法を適用することができます。

  1. リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができます。この場合、リース資産及びリース債務は、リース料総額で計上され、支払利息は計上されず、減価償却費のみが計上されます。
  2. 利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法として、定額法を採用することができます。

ファイナンス・リース取引のリース資産については、原則として、有形固定資産、無形固定資産ごとに、一括してリース資産として表示します。ただし、有形固定資産又は無形固定資産に属する各科目に含めることもできます。

ファイナンス・リース取引について、取得したリース物件の価額に重要性が乏しい場合、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができます。

オペレーティング・リース取引の会計処理

オペレーティング・リース取引については通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行います。

計算書類の注記

リース取引については、以下の項目を計算書類に注記します。

  1. ファイナンス・リース取引の場合、リース資産について、その内容(主な資産の種類等)及び減価償却の方法
  2. オペレーティング・リース取引のうち解約不能のものに係る未経過リース料は、貸借対照表日後 1 年以内のリース期間に係るものと、貸借対照表日後 1 年を超えるリース期間に係るものとに区分して注記する。

 

有価証券の評価

社会福祉法人における有価証券は、満期保有目的の債券それ以外の有価証券に区分されます。

満期保有目的の債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする必要があります。
ただし、取得価額と債券金額との差額について重要性が乏しい満期保有目的の債券については、償却原価法を適用しないことができます。

満期保有目的の債券以外の有価証券の期末時点の評価については、市場価格のあるものは時価で、市場価格がないものについては取得価額で、それぞれ評価します。
ただし、時価が著しく下落し、回復の見込みがないものについては時価で評価する必要があります(強制評価減)。
(時価が著しく下落とは、時価が帳簿価額の概ね50%を下回ることをいいます)

なお、強制評価減を行った場合の表示方法については、「資産評価損」として特別増減の部に計上する必要があります。

 

寄附金

  1. 金銭の寄附は、寄附目的により拠点区分の帰属を決定し、当該拠点区分の資金収支計算書の経常経費寄附金収入又は施設整備等寄附金収入として計上し、併せて事業活動計算書の経常経費寄附金収益又は施設整備等寄附金収益として計上します。
  2. 寄附物品については、取得時の時価により、経常経費に対する寄附物品であれば経常経費寄附金収入及び経常経費寄附金収益として計上します。
    土地などの支払資金の増減に影響しない寄附物品については、事業活動計算書の固定資産受贈額として計上するものとし、資金収支計算書には計上しません。
    ただし、当該物品が飲食物等で即日消費されるもの又は社会通念上受取寄附金として扱うことが不適当なものはこの限りではないとされています。
  3. 共同募金会からの受配者指定寄附金のうち、施設整備及び設備整備に係る配分金(資産の取得等に係る借入金の償還に充てるものを含む。)は、施設整備等寄附金収入として計上し、併せて施設整備等寄附金収益として計上します。このうち基本金として組入れすべきものは、基本金に組入れます。
    また、受配者指定寄附金のうち経常的経費に係る配分金は、経常経費寄附金収入として計上し、併せて経常経費寄附金収益として計上します。
    一方、受配者指定寄附金以外の配分金のうち、経常的経費に係る配分金は、補助金事業収入及び補助金事業収益に計上します。
    また、受配者指定寄附金以外の配分金のうち、施設整備及び設備整備に係る配分金は、施設整備等補助金収入及び施設整備等補助金収益に計上し、国庫補助金等特別積立金を積立てます。

寄附金及び寄附物品を収受した場合においては、寄附者から寄附申込書を受けることとし、寄附金収益明細書を作成し、寄附者、寄附目的、寄附金額等を記載する必要があります。

 

関連当事者取引

関連当事者の範囲

関連当事者とは、以下に該当する者をいいます。

  1. 当該社会福祉法人の常勤の役員又は評議員として報酬を受けている者及びそれらの近親者
    近親者とは、3親等内の親族及びこの者と特別の関係にある者をいいます。また、「親族及びこの者と特別の関係にあるもの」とは例えば以下をいいます。
    ① 当該役員又は評議員とまだ婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻と同様の事情にある者
    ② 当該役員又は評議員から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者
    ③ ①又は②の親族で、これらの者と生計を一にしている者
  2. 1.の該当者が議決権の過半数を有している法人
  3. 支配法人(当該社会福祉法人の財務及び営業又は事業の方針の決定を支配している他の法人)
    他の法人の役員、評議員若しくは職員である者が当該社会福祉法人の評議員会の構成員の過半数を占めている場合、支配法人に該当します。
  4. 被支配法人(当該社会福祉法人が財務及び営業又は事業の方針の決定を支配しいる他の法人)
    当該社会福祉法人の役員、評議員若しくは職員である者が他の法人の評議員会の構成員の過半数を占めている場合、被支配法人に該当します。
  5. 当該社会福祉法人と同一の支配法人を持つ法人(支配法人が当該社会福祉法人以外に支配している法人)

関連当事者との取引に係る開示対象範囲

関連当事者が上記の1.または2.の場合は、事業活動計算書項目及び貸借対照表項目いずれに係る取引についても、年間 1,000 万円を超える取引については全て開示対象となります。

支配法人、被支配法人又は同一の支配法人を持つ法人との取引の開示対象範囲は以下のとおりです。

  1. 事業活動計算書項目に係る関連当事者との取引
    サービス活動収益又はサービス活動外収益の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに、サービス活動収益とサービス活動外収益の合計額の 100 分の 10 を超える取引
    サービス活動費用又はサービス活動外費用の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに、サービス活動費用とサービス活動外費用の合計額の 100 分の 10 を超える取引
    特別収益又は特別費用の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに 1,000 万円を超える収益又は費用の額について、その取引総額を開示し、取引総額と損益が相違する場合は損益を併せて開示します。ただし、各項目に属する科目の取引に係る損益の合計額が当期活動増減差額の100 分の 10 以下となる場合には、開示は不要です。
  2. 貸借対照表項目に係る関連当事者との取引
    貸借対照表項目に属する科目の残高については、その金額が資産の合計額の100 分の 1 を超える取引について開示します。

なお、関連当事者との間の取引のうち次に定める取引については、注記を不要です。

  1. 一般競争入札による取引並びに預金利息及び配当金の受取りその他取引の性格からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引
  2. 役員又は評議員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い

関連当事者との取引の開示内容

関連当事者との取引については、次に掲げる事項を原則として関連当事者ごとに注記しなればならないとされています。

  1. 当該関連当事者が法人の場合には、その名称、所在地、直近の会計年度末における資産総額及び事業の内容
    なお、当該関連当事者が会社の場合には、当該関連当事者の議決権に対する当該社会福祉法人の役員、評議員又はそれらの近親者の所有割合
  2. 当該関連当事者が個人の場合には、その氏名及び職業
  3. 当該社会福祉法人と関連当事者との関係
  4. 取引の内容
  5. 取引の種類別の取引金額
  6. 取引条件及び取引条件の決定方針
  7. 取引により発生した債権債務に係る主な科目別の期末残高
  8. 取引条件の変更があった場合には、その旨、変更の内容及び当該変更が計算書類に与えている影響の内容

 

退職給付会計

退職給付会計の適用に当たり、退職給付の対象となる職員数が 300 人未満の社会福祉法人のほか、職員数が 300 人以上であっても、年齢や勤務期間に偏りがあるなどにより数理計算結果に一定の高い水準の信頼性が得られない場合原則的な方法により算定した場合の額と期末要支給額との差異に重要性が乏しいと考えられる場合においては、退職一時金に係る債務について期末要支給額により算定することができるものとされています。
(期末要支給額とは、期末時点において、全従業員が退職すると仮定した場合の、全従業員に対する退職金の支給総額をいいます。)

独立行政法人福祉医療機構の実施する社会福祉施設職員等退職手当共済制度及び確定拠出年金制度のように拠出以後に追加的な負担が生じない外部拠出型の制度については、当該制度に基づく要拠出額である掛金額をもって費用処理します。

都道府県等の実施する退職共済制度の会計処理は以下のとおりです。

  1. 共済契約者である社会福祉法人
    退職一時金制度等の確定給付型を採用している場合は、約定の額を退職給付引当金に計上します。ただし被共済職員個人の拠出金がある場合は、約定の給付額から被共済職員個人が既に拠出した掛金累計額を差し引いた額を退職給付引当金に計上します。
    なお、簡便法として、期末退職金要支給額(約定の給付額から被共済職員個人が既に拠出した掛金累計額を差し引いた額)を退職給付引当金とし同額の退職給付引当資産を計上する方法や、社会福祉法人の負担する掛金額を退職給付引当資産とし同額の退職給付引当金を計上する方法を用いることができます。
  2. 退職共済事業実施者である社会福祉法人
    退職共済事業実施者である社会福祉法人が、共済契約者である法人及び加入者から受領した掛金は資産に計上し、同額を負債として認識します。資産は、会計基準省令第4条に規定する資産の評価の方法に従って評価します。負債は、資産の増減額と同額を負債に加減し、会計基準省令第5条の債務額とします。

 

法人税、住民税及び事業税

法人税、住民税及び事業税を納税する法人は、事業活動計算書等の特別増減差額と当期活動増減差額の間に以下の欄を追加します。

なお、重要性の原則により税効果会計を適用しない法人は、「法人税等調整額」欄の追加は不要です。

また、法人税、住民税及び事業税を納税する法人は、拠点区分資金収支計算書の事業活動支出の「その他の支出」に中区分科目として「法人税、住民税及び事業税支出」を追加記載します。

法人税、住民税及び事業税のうちの未払額については、流動負債の部に「未払法人税等」の科目を設けて記載します。
また、税効果会計を適用する場合に生じる繰延税金資産及び繰延税金負債は、当該科目名をもって固定資産又は固定負債に区分して記載します。

 

税効果会計

企業会計同様、税効果会計が導入されています。

ただし、法人税法上の収益事業に係る課税所得の額に重要性が乏しい場合、税効果会計を適用しないで、繰延税金資産又は繰延税金負債を計上しないことができます。

 

正常営業循環基準と1年基準

未収金、前払金、未払金、前受金等の経常的な取引によって発生した債権債務は、流動資産または流動負債に属するものとします。ただし、これらの債権のうち、破産債権、更生債権等で1年以内に回収されないことが明らかなものは固定資産に属するものとします(正常営業循環基準)。

貸付金、借入金等の経常的な取引以外の取引によって発生した債権債務については、貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に入金又は支払の期限が到来するものは流動資産又は流動負債に属するものとし、入金又は支払の期限が1年を超えて到来するものは固定資産又は固定負債に属するものとします(1年基準)。

現金及び預貯金は、原則として流動資産に属するものしますが、特定の目的で保有する預貯金は、固定資産に属するものとします。この場合、当該目的を示す適当な科目で表示するものとします。

 

基本金

基本金の区分

基本金は、社会福祉法人が事業開始等に当たって財源として受け入れた寄附金の額を計上するものとされ、具体的には以下のものが該当します。

  1. 社会福祉法人の設立並びに施設の創設及び増築等のために基本財産等を取得すべきものとして指定された寄附金の額(第1号基本金)
  2. 1.の資産の取得等に係る借入金の元金償還に充てるものとして指定された寄附金の額(第2号基本金)
  3. 施設の創設及び増築時等に運転資金に充てるために収受した寄附金の額(第3号基本金)
第1号基本金

上記1.の「社会福祉法人の設立並びに施設の創設及び増築等のために基本財産等を取得すべきものとして指定された寄附金の額」とは、土地、施設の創設、増築、増改築における増築分、拡張における面積増加分及び施設の創設及び増築時等における初度設備整備、非常通報装置設備整備、屋内消火栓設備整備等の基本財産等の取得に係る寄附金の額とします。
さらに、地方公共団体から無償又は低廉な価額により譲渡された土地、建物の評価額(又は評価差額)は、寄附金とせずに、国庫補助金等に含めて取り扱うものとします。
なお、設備の更新、改築等に当たっての寄附金は基本金に含めないものとします。

第2号基本金

上記2.の「資産の取得等に係る借入金の元金償還に充てるものとして指定された寄附金の額」とは、施設の創設及び増築等のために基本財産等を取得するにあたって、借入金が生じた場合において、その借入金の返済を目的として収受した寄附金の総額をいいます。

第3号基本金

上記3.の「施設の創設及び増築時等に運転資金に充てるために収受した寄附金の額」とは、社会福祉法人設立時に必要と判断された、当該法人の年間事業費の 12 分の1以上に相当する寄附金の額及び増築等の際に運転資金に充てるために収受した寄附金の額をいいます。

基本金の組入れ

基本金への組入れは、上記の寄附金を事業活動計算書の特別収益に計上した後、その収益に相当する額を基本金組入額として特別費用に計上して行います。

複数の施設に対して一括して寄附金を受け入れた場合には、最も合理的な基準に基づいて各拠点区分に配分します。

なお、基本金の組み入れは会計年度末に一括して合計額を計上することができるものとされています。

基本金の取崩し

社会福祉法人が事業の一部又は全部を廃止し、かつ基本金組み入れの対象となった基本財産又はその他の固定資産が廃棄され、又は売却された場合には、当該事業に関して組み入れられた基本金の一部又は全部の額を取り崩し、その金額を事業活動計算書の繰越活動増減差額の部に計上します。

基本金の取崩しについても各拠点区分において取崩しの処理を行います。

なお、基本金を取り崩す場合には、事前に所轄庁と協議し、内容の審査を受けなければならないこととされています。

 

国庫補助金等特別積立金

国庫補助金の内容

国庫補助金等特別積立金には、社会福祉法人が施設及び設備の整備のために国、地方公共団体等から受領した補助金、助成金、交付金等(国庫補助金等)の額を計上するものとし、具体的には以下のものが該当します。

  1. 施設及び設備の整備のために国及び地方公共団体等から受領した補助金、助成金及び交付金等
  2. 設備資金借入金の返済時期に合わせて執行される補助金等のうち、施設整備時又は設備整備時においてその受領金額が確実に見込まれており、実質的に施設整備事業又は設備整備事業に対する補助金等に相当するもの

また、以下のものも国庫補助金に含まれます。

  1. 自転車競技法第 24 条第 6 号などに基づいたいわゆる民間公益補助事業による助成金等
  2. 施設整備及び設備整備の目的で共同募金会から受ける受配者指定寄附金以外の配分金
  3. 設備資金借入金の返済時期に合わせて執行される補助金等のうち、施設整備時又は設備整備時においてその受領金額が確実に見込まれており、実質的に施設整備事業又は設備整備事業に対する補助金等に相当するもの

国庫補助金等特別積立金の積立て

国庫補助金等特別積立金の積立ては、国庫補助金等の収益額を事業活動計算書の特別収益に計上した後、その収益に相当する額を国庫補助金等特別積立金積立額として特別費用に計上して行います。

国庫補助金等特別積立金の積立てにあたっては、各拠点区分で積み立てることとし、合築等により受け入れる拠点区分が判明しない場合、又は複数の施設に対して補助金を受け入れた場合には、最も合理的な基準に基づいて各拠点区分に配分することとされています。

設備資金借入金の返済時期に合わせて執行される補助金等のうち、施設整備時又は設備整備時においてその受領金額が確実に見込まれており、実質的に施設整備事業又は設備整備事業に対する補助金等に相当するものとして国庫補助金等とされたものは、実際に償還補助があったときに当該金額を国庫補助金等特別積立金に積立てます。
なお、当該国庫補助金等が計画通りに入金されなかった場合については、差額部分を当初の予定額に加減算して、再度配分計算を行うものとされています。ただし、当該金額が僅少な場合は、再計算を省略することができるものとされています。さらに、設備資金借入金の償還補助が打ち切られた場合の国庫補助金等については、差額部分を当初の予定額に加減算して、再度配分計算をし、経過期間分の修正を行います。当該修正額は原則として特別増減の部に記載しますが、重要性が乏しい場合はサービス活動外増減の部に記載できます。

国庫補助金等特別積立金の取崩し

国庫補助金等特別積立金は、毎会計年度、国庫補助金等により取得した資産の減価償却費等により事業費用として費用配分される額の国庫補助金等の当該資産の取得原価に対する割合に相当する額を取り崩し、事業活動計算書のサービス活動費用に控除項目として計上しなければならないこととされています。

上記の取り崩しの場合においても各拠点区分で処理することとなります。

非償却資産である土地に対する国庫補助金等は、原則として取崩しという事態は生じず、将来にわたっても純資産に計上します。

設備資金借入金の返済時期に合わせて執行される補助金のうち、施設整備時又は設備整備時においてその受領金額が確実に見込まれており、実質的に施設整備事業又は設備整備事業に対する補助金等に相当するものとして積み立てられた国庫補助金等特別積立金の取崩額の計算に当たっては、償還補助総額を基礎として支出対象経費(主として減価償却費をいう)の期間費用計上に対応して国庫補助金等特別積立金取崩額をサービス活動費用の控除項目として計上する。

なお、国庫補助金等特別積立金の積立ての対象となった基本財産等が廃棄され又は売却された場合には、当該資産に相当する国庫補助金等特別積立金の額を取崩し、事業活動計算書の特別費用に控除項目として計上する必要があります。

 

その他積立金と積立資産

その他の積立金は、将来の特定の目的の費用又は損失の発生に備えるため、社会福祉法人が理事会の議決に基づき事業活動計算書の当期末繰越活動増減差額から積立金として積み立てた額を計上します。

その他の積立金は、当期末繰越活動増減差額にその他の積立金取崩額を加算した額に余剰が生じた場合にのみ、その範囲内で将来の特定の目的のために積立金を積み立てることができるものとされています。

積立金を計上する際は、積立ての目的を示す名称を付し、同額の積立資産を積み立てることとされています。ただし、資金管理上の理由等から積立資産の積立てが必要とされる場合には、その名称・理由を明確化した上で積立金を積み立てずに積立資産を計上できるものとされています。

積立金と積立資産の積立ては、増減差額の発生した年度の計算書類に反映させるものですが、専用の預金口座で管理する場合は、遅くとも決算理事会終了後2か月を越えないうちに行うものとされています。

なお、積立金に対応する積立資産を取崩す場合には、当該積立金を同額取崩す必要があります。

 

資金の貸付・繰入

同一法人内の事業区分間または拠点区分間、サービス区分間での資金の一時的な貸借を「繰替使用」といい、原則として年度内に清算する必要があります。

なお、法人外への貸付は、生活困窮者に対して無利子または低利での資金を融通する事業など一部の例外を除き、原則として認められません。

社会福祉法人の事業間の資金の繰入れについては、様々な制限があります。詳しくはこちらをご参照ください。

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