監査業務の基本的な流れ

予備調査の実施

監査契約初年度の場合、年間の監査計画の立案を目的とした事前調査を実施します。これを予備調査といいます。

予備調査では、前年度の計算書類・税務申告書類の査閲、業務フローのヒアリング等を通じて、監査クライアントのビジネスについて概括的に理解するための作業を実施します。

監査契約2年目以降(継続監査の場合)は予備調査は省略されます。

 

監査アプローチの基本的な考え方

予備調査の結果に基づき、財務諸表項目のうち、監査リスクが高いと思われるものをピックアップしていきます。

基本的な考え方としては、監査リスクが相対的に高いと判断された財務諸表項目については強力な監査手続を集中的に立案・実施し、監査リスクが相対的に低いと判断された財務諸表項目については省力化した監査手続を立案・実施していきます。

 

年度監査計画の作成

監査アプローチの方向性が決まると、年間の監査スケジュールを立案します。「いつ、誰が、どこで、何をするか」について大枠をスケジュール化し、年度監査計画として取り纏めます。

 

内部統制の有効性と監査手続の選定について

監査リスクが相対的に高いと判断された財務諸表項目については、会社の内部統制の整備状況と運用状況をチェックし、会社の内部統制によってミスが適時に防止・発見されるかどうかを評価します。

内部統制が有効と判断された場合には、相対的にミスが生じていない可能性が高いと判断し、省力化した監査手続を実施し、内部統制の有効性に疑問がある場合には強力な監査手続を集中的に立案・実施します。

 

監査手続の種類

監査手続には以下のものがあり、それぞれの証拠力に強弱があります。監査リスクの高低に応じて、実施する監査手続の取捨選択を行います。

  • 実査
    監査人自ら監査対象物の実在性を検証する手続であり、主な監査対象物は現金預金、有価証券、手形債権、固定資産等となります。
  • 立会
    会社が実施する実地棚卸の現場に出向き、棚卸の方法・手続が適切に実施されているかを検証する手続であり、主な監査対象物は製品・商品・原材料等の棚卸資産となります。
  • 確認
    金融機関や取引先関係者等の外部の第三者に対し、文書による照会を行い、その残高の実在性・正確性を検証する手続であり、主な監査対象物は銀行預金、借入金、売掛金や買掛金等の債権債務となります。
  • 質問
    口頭又は書面で問い合わせた回答の正否や適否を検証する手続となり、監査の様々な局面で利用されます。
  • 視察
    監査人自ら監査対象を見てその状況を確かめる手続となります。会社のビジネスの把握のためや、口頭や書面で得た情報が実際のものと同一の内容か検証する等の目的で実施されます。
  • 閲覧
    書面・証憑等を監査人自ら入手・閲覧する手続であり、契約書・稟議書・議事録等を含む、書類全般に対して実施されます。
  • 証憑突合
    取引の証拠資料となる書類を監査人自ら他の資料・記録と照合してその事実や記録の妥当性を検証する手続であり、取引記録や勘定残高の検証に利用されます。
  • 帳簿突合
    会計帳簿とその内訳帳簿や明細表等と照合してその妥当性を検証する手続であり、会計帳簿全般に実施されます。
  • 勘定分析
    勘定科目を構成する個々の要素の検証や、勘定科目間の金額の整合性などの検証を指します。

監査調書の作成ととりまとめ

各監査担当者は、実施した監査の経過と結果を監査調書に記載します。監査現場責任者は監査の最終段階において、各監査担当者が作成した監査調書のとりまとめを行います。

 

監査意見の形成

監査の最終段階において、監査責任者は査閲した監査調書に基づき監査意見の形成を行います。
また、独立した第三者である他の公認会計士から、監査責任者の監査意見形成の妥当性について審査を受けます。

 

監査結果報告

年間の監査の過程で発生した気付き事項を監査結果報告書としてとりまとめ、経営者・監査役等の経営陣へ報告します。

© 2024 岡本尚樹公認会計士・税理士事務所 Powered by AFFINGER5