会社法上の会社の種類とそれぞれの特徴
会社法上、設立できる会社の種類は「株式会社」、「合同会社」、「合資会社」、「合名会社」の4種類で、それぞれの会社の特徴は下記のとおりです。
項目 | 株式会社 | 合同会社 | 合資会社 | 合名会社 |
---|---|---|---|---|
対外的な信用 | 高 | 低 | 低 | 低 |
上場の可否 | 可 | 不可 | 不可 | 不可 |
設立時の費用 | 約24万円 | 約10万円 | 約10万円 | 約10万円 |
設立手続 | 煩雑 | 容易 | 容易 | 容易 |
出資形態 | 株式 | 出資金 | 出資金 | 出資金 |
最低資本金 | 1円 | 1円 | 無限責任社員 有限責任社員 |
規定なし |
代表者 | 代表取締役 | 社員 | 社員 | 社員 |
出資者の 最低人数 |
1名以上 | 1名以上 | 2名以上 | 2名以上 |
出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 | 無限責任社員 有限責任社員 |
無限責任 |
出資者の呼称 | 株主 | 社員 | 無限責任社員 有限責任社員 |
社員 |
出資者の公募 | 可 | 不可 | 不可 | 不可 |
役員 (業務執行者) |
取締役1名 ~監査役は任意 |
業務執行社員 | 無限責任社員 全員が経営者 |
全社員が経営者 |
役員の任期 | 取締役2年 (最長10年) |
無期限 | 無期限 | 無期限 |
役員と出資者 の関係 |
委任契約 | 社員本人 | 社員本人 | 社員本人 |
最高意思 決定機関 |
株主総会 | 全社員の同意 | 全社員の同意 | 全社員の同意 |
決算公告の義務 | あり | なし | なし | なし |
定款の認証 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
持分の譲渡 | 原則自由 | 社員全員の 同意が必要 |
無限責任社員の 承諾が必要 |
社員の承諾が 必要 |
譲渡の制限 | 非上場会社では譲渡制限定を設けることが多い | 社員総会の承認事項と定める | 無限責任社員の承諾があれば 譲渡可 |
社員の承諾が あれば譲渡可 |
利益配分 | 株式保有割合に応じて配分 | 自由 | 自由 | 自由 |
節税範囲 | 広い | 広い | 限定的 | 限定的 |
3つの大きな相違点
4つの会社形態の大きな相違点は、①出資者の責任の相違、②出資形態の相違、③機関設計の相違の3点となります。
① 出資者の責任の相違
- 株式会社と合同会社は有限責任のみであるのに対し、合資会社と合名会社は無限責任の社員が最低1名必要とされていることとなっています。
- 有限責任の場合は、会社の債務の責任はその出資の範囲内にとどまる一方、無限責任の場合は、万が一会社が倒産した場合にその債務の責任を負わなければならないとというデメリットがあります。
- このため、実務的に起業家が合資会社や合名会社を設立することは稀で、株式会社か合同会社の2択となります。
(以降、株式会社と合同会社のみの説明となります)
② 出資形態の相違
- 株式会社の場合、出資形態として株式制度が適用されており、各株主が引き受ける株式数に応じて出資割合が決定されます。利益配分(配当金)は株主の株式保有割合に応じて配分されるため、出資額に比例した利益配分が行われることとなります。
- 一方、合同会社の場合、株式の制度が適用されていません。利益配分は社員間の協議で自由に考えることが出来ます。
③ 機関設計の相違
- 株式会社の場合、最高意思決定機関である株主総会が業務執行主体となるのではなく、株主総会から委任された取締役(会)が業務執行者となります(所有と経営の分離)。そのため、取締役(会)の業務執行を監査するための機関としての監査役制度が存在する等、機関設計が複雑となっています。
- 一方、合同会社の場合、業務執行者は出資者である社員となります(所有と経営の一致)。
株式会社と合同会社のメリット・デメリット
株式会社の、合同会社と比較した場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
株式会社のメリット
① 信用度が高い
② 上場することができる
③ 資金調達の選択肢が広い
株式会社のデメリット
① 設立費用が高い
② 設立手続が複雑である
③ 機関設計が複雑である
④ 株主総会の開催や決算広告の義務があるなど、法令の規定を受けやすい
⑤ 利益配分は保有株式数に応じる決まりがある
一方、合同会社のメリット・デメリットは株式会社のそれと反対のものとなります。
合同会社のメリット
① 設立費用が安い
② 設立手続が簡単
③ 機関設計が単純である
④ 株主総会の開催や決算公告の義務がないなど、法令の規定が少ない
⑤ 利益配分の自由度が高い
合同会社のデメリット
① 認知度が低く、信用を低く見られがち
② 上場することができない
③ 資金調達の選択肢が少ない
④ 経営方針や利益配分等で社員同士が対立する可能性がある